2010.03.03 / Poem『Kill The Hippies』


 打ち合わせで下高井戸。トラスムンドを覗いた後、旧友と朝まで呑んで、そのまま仕事に戻る。部屋では嘔吐下痢症にかかった娘がテレビを観ていて、たまに「ゲーするの」とトイレに立ち、便座につっぷし咳をしている。4歳って、こんなに大人か? と関心しつつ、先日のOS再インストールからまだ復旧できていない作業環境と格闘。この日記をアップするために必要なDreamweaverのサイト定義に必要なパスワードがEntourageの履歴に保存されているため、それをインポートするためにはEntourageを再度インストールしなくてはならず、その後ようやくMailにエクスポートできる、というパズル。しかしそんな緊張状態がよかったのか、昼過ぎには本調子となり、そのまま眠らずまた呑みに出かけたが、目当ての店は満席で入れず、大人4人がその近くの居酒屋で時間を潰す……つもりが、そこも予想外に旨く、いつのまにか腰を据えてしまった。そうこうしているうちに体力が切れ、ひとり途中退席。店にマフラーを忘れている、と、さっき教えてもらいました。
 眠りはなにより大切、という話です。

 写真はトラスムンドで(たぶん1年ぐらい)取り置いてもらっていたMix CD……といっても音楽はオマケみたいなもので、募る想い(←ただし発言の2秒前から)をマイクに吐きまくったライヴ・レコーディング。お前ら死ねだのなんなのを「こんちは〜」とか「最近どうよ?」ぐらいに温かくカジュアルに聴かせているところと、ときおり思い出したように吹き散らされるハーモニカの音色が物悲しくていい。Mix CDといえど、その人にしかできない表現は(たとえ1年寝かされても)古くならない、という好例か。






2010.03.01 / Marcelle Meyer『Ses enregistrements 1925-1957』AMAZON


 ソフトウェア・アップデートの通知のクリックをきっかけにSafariが立ち上がらなくなり、丸1日あれこれやってはみたものの、復旧せず。デスクトップのデータ、欧文フォント、メールの履歴やブックマークなどの主要データにバックアップをかけて、ここは潔く諦めOSを再インストール。以前からAdobeのソフト2つ以上立ち上げるとどちらかが落ちてしまったり、Entourage履歴の展開に不安になるような時間がかかっていたりしたので、ちょうどいい機会だったのかもしれない。あとはDreamweaverとPainterを入れて、Entourageの履歴をMailに移植できれば「クラッシュしてよかったじゃん!」ってところまでいけるはず。
 それにしてもAppleの対応は素晴らしい。いつも待たずに繋がるカスタマーサポートから察するに、相当な数の専門医を雇っているのでしょう。

「わたくしではわかりかねますので、大変申し訳ございませんが、より上位の担当にお繋ぎしてもよろしいでしょうか」

 なんと人に安心感を与える言葉だろうか。

 そんな作業の中、安定剤のように流れ続けたMarcelle Meyerのピアノ。これは最近手に入れた17枚組の(ほぼ)コンプリート・ボックス。どこを聴いても素晴しいのですが、なかでもラヴェルのDisc 2は格別。「Forlane」は10回ぐらい続けて聴いてしまった。





2010.02.27 / SOG「Abweichung」AMAZON


「これもこれも今朝採れたばっかだべ〜」と、およそ食えそうにもない異形の遺伝子組み換えフルーツ&残留農薬爆発ベジタブルを叩き売る農夫姿のMike Ink(巨人)が目に浮かぶ傑作。大きな心で大きく捕えないと音楽に聴こえないというか、音楽未満の音を並べただけ、みたいに聴こえる1曲目が最高すぎる。ジャケも裏ジャケもいい。



       2010.02.18 / Television『The Blow-Up』AMAZON   長い列になったニュー・リリースを待たせたままにして、思春期に好きだったバンドのライヴ盤や未発表トラック集を裏口から招くようになったら俺ももうオッサンだ……という自戒を絞め殺しながら、ついに買ってしまった2枚組ライヴ。もう随分とカートに入りっぱなしでしたが、週末の日本酒に操られ、ついに注文してしまったものが、今朝届いた。   Televisionは『Marquee Moon』。そして、閉じられたコインロッ


2010.02.25 / Harvey Presents Locussolus「Gunship」


「スライムみたいなバイオ生命体で、ホコリが大好物で、家主に隠れてガンガン喰いまくってくれて、なおかつ最期はカサカサのデカい毛玉みたいになって死ぬので、そのままゴミ箱へ捨てればいい……みたいなの出ないかな。ペットと用具の中間みたいなやつ……」と願いながら、デスク周りを大掃除した。早い話、コレの命つきが欲しいって話。スキャナーの裏や外づけHDの隙間はホント地獄。ハッキリとグレーゾーン。

 今の仕事でいよいよ一眼レフを買おうと思っているのだけど(要は予算がなくカメラマンに頼めない/コレなんかはGRで撮ってました)、自分もブシュブシュとブロアーを駆使するようになるのだろうか。

 Harvey来日しますね。いくなら江ノ島かなぁ……。



       2010.02.18 / Television『The Blow-Up』AMAZON   長い列になったニュー・リリースを待たせたままにして、思春期に好きだったバンドのライヴ盤や未発表トラック集を裏口から招くようになったら俺ももうオッサンだ……という自戒を絞め殺しながら、ついに買ってしまった2枚組ライヴ。もう随分とカートに入りっぱなしでしたが、週末の日本酒に操られ、ついに注文してしまったものが、今朝届いた。   Televisionは『Marquee Moon』。そして、閉じられたコインロッ


2010.02.24 / V.A.『Sleepwalk』AMAZON


 眠気と無精髭をカットするべく10時のオープンと同時にジムへ駆け込む。しばらく泳いでから、サウナと水風呂。昨晩はたくさんの原稿仕事をしていて、国内アーティストのレヴューもかなりの数をやらせてもらったのだけど、そのうちの3割がベスト盤もしくはB面集的な企画モノであったことを思い出し、やはりレコード業界は虫の息なのだろうか……みたいなことを考えながら一時帰宅。新しいブック・デザインのラフを描き、駅前マック&電車の中で清書して、昼には渋谷。たくさんのアイデアを、敏腕担当編集者とゴツゴツと音がするほどにブツけあって、今日のところは引き分けか……という素晴らしい打ち合わせであった。
 その本は「前半は、スワッピング・マニア夫婦の華麗なる性絵巻。後半一転、舞台は法廷に。終盤は6回ものショック療法&どんでん返しが!」というとんでもない代物で、もう食えないよ!と破裂寸前の業務用クリップにて綴じられたA3ゲラ180枚を、3時間で読み終えてしまった。
 これはデザインが終わったら改めてオススメしたいと思います。

 写真はOptimoのMIX CD 2008。『Psyche Out』と『Walkabout』の影に隠れてる感じもありますが、きのうまで冬だったのにいきなり夏、みたいな今日の日には、断然コレでしょう……あぁ温いし眠い……という名ミックス。ClusterEno, Moebius and RoedeliusArtheur Russellと続く中盤は、そうか、君らもか、という安堵感が勝ってしまうにしても、もうすこし浮上し、全体を俯瞰してみれば、Nurse With WoundKaren DaltonNitty Gritty Dirt Bandが同じテーブルについている、というのはやはりスゴい。静かな湖畔から、そこがだんだんと騒がしくなるものの、いったん納屋まで戻って砂漠までウロウロする感じの青春18切符感が◎。
 アートワークは同年のターナー賞を獲っているKathy Wilkes。全ページがハンドライティングの美しいデザインと相まって、シンプルだがたまらないアイテム感がある。こういうパッケージに触れ、裏返すことなく最後まで聴き通したとき、やはりCDも生き残るべきではないかと思え、ジットリと嬉しい。



       2010.02.18 / Television『The Blow-Up』AMAZON   長い列になったニュー・リリースを待たせたままにして、思春期に好きだったバンドのライヴ盤や未発表トラック集を裏口から招くようになったら俺ももうオッサンだ……という自戒を絞め殺しながら、ついに買ってしまった2枚組ライヴ。もう随分とカートに入りっぱなしでしたが、週末の日本酒に操られ、ついに注文してしまったものが、今朝届いた。   Televisionは『Marquee Moon』。そして、閉じられたコインロッ

       2010.02.18 / Television『The Blow-Up』AMAZON   長い列になったニュー・リリースを待たせたままにして、思春期に好きだったバンドのライヴ盤や未発表トラック集を裏口から招くようになったら俺ももうオッサンだ……という自戒を絞め殺しながら、ついに買ってしまった2枚組ライヴ。もう随分とカートに入りっぱなしでしたが、週末の日本酒に操られ、ついに注文してしまったものが、今朝届いた。   Televisionは『Marquee Moon』。そして、閉じられたコインロッ


2010.02.20
Blues Control『Local Flavor』AMAZON
Ornette Coleman『Twins』
AMAZON


Post Newnow Crue-L Classic Remixes Vol.2』をココとかココで買うと貰える瀧見さんのミックス『Zero to Ten Mix』『Live Mix At Eleven Pt.2 Of 3 @Mie Australia Memorial Hall』を送ってもらった……が最後、そればかりを交互に聴いている。ふと思い立って、営業用に『Post Newnow』ジャケを撮影。こうして自分の仕事をまとめるのはとても苦手なのだけど、仕事がなくなるのはさらに苦手なので。

 Kanye West『Vh1 Storytellers』を鑑賞。シズル感ヒタヒタのプロテイン・ファンクな音楽よりなにより、ステージ・セット〜周囲を囲むオーケストラのヴィジュアルが悪夢的でよかった。

 最近またよく聴いているBlues Control(写真)。ベランダに干したジーンズの穴がゴルフボール大にトリミングする西日のためのサウンドトラック。
 それはそうと、Twitterを初めてから、前から多かった体言止めがさらに増えたように思う。自分が自分の編集者なら、この日記は赤入れ真っ赤になっているはず。

 オーネットの未発表テイク集『Twins』 もたまに。『Free Jazz』から漏れた1曲目、昔はありがたかったが、今は大きな布団の中でふた組のカップルがキャッキャしてるだけのように聴こえる。それよりもB2のScott LaFaroが最高。理知的なフレージングでスピード感を麻痺させるソロ。そして、そのあっけないほどにサッパリとした幕切れ。入口も出口も順路もない、知恵の輪もしくはウロボロス的な楽曲の魅力がこの低音には凝固している。



       2010.02.18 / Television『The Blow-Up』AMAZON   長い列になったニュー・リリースを待たせたままにして、思春期に好きだったバンドのライヴ盤や未発表トラック集を裏口から招くようになったら俺ももうオッサンだ……という自戒を絞め殺しながら、ついに買ってしまった2枚組ライヴ。もう随分とカートに入りっぱなしでしたが、週末の日本酒に操られ、ついに注文してしまったものが、今朝届いた。   Televisionは『Marquee Moon』。そして、閉じられたコインロッ


2010.02.18 / Television『The Blow-Up』AMAZON


 長い列になったニュー・リリースを待たせたままにして、思春期に好きだったバンドのライヴ盤や未発表トラック集を裏口から招くようになったら俺ももうオッサンだ……という自戒を絞め殺しながら、ついに買ってしまった2枚組ライヴ。もう随分とカートに入りっぱなしでしたが、週末の日本酒に操られ、ついに注文してしまったものが、今朝届いた。

 Televisionは『Marquee Moon』。そして、閉じられたコインロッカーの奥から聴こえる携帯のヴァイヴ音のように不穏かつ未来への接続にあふれたDemoトラック集『Television with Bryan Eno』。つまりは一番搾りの部分があればよいと思うのだけど、この(再結成前の)ラスト・ライヴでの「Prove It」や「Venus De Milo」も、震えがくるほどに感動的。
 シンコペーションに切れ味がなく、そのぶんカタマリでの斜角度とグズグズ感に秀でた「Elevation」なども、大胆なミストーン含みで素晴らしく、ゆったりと頭蓋を旋回する。

 このバンドの楽曲がいつまでも古びないのは、まるでブラス・バンドのホーンのようなフレーズを単音弾きで速射する、ギターの使い方だと思う。
 自分がもっとも好きな曲は、やはり「Venus De Milo」なのだけど、試しにギターの上下運動とヴォーカル・ラインを頭の中で入れ換えながら聴いてみると、(原曲の陰影は消えるものの)それでも究極の名曲として成立してしまうことがわかり、その構造の異常さが浮き彫りになる。
 しかもこの曲の(ヴォーカル・サイドの)サビは「ハァ!?」という五線譜表記の困難な「問いかけ」に集約され、ナチュラル・ヴィブラートな雌鳥声は「ミロのヴィーナスの腕に抱かれ」と歌っているが、そもそもミロのヴィーナスといえばこの状態。とにもかくにも圧倒的な新しさのレヴェルなのだ。

「アートっぽいことをやろう」という意思では決して辿り着けないソングライティングの極み。骨のある、というか、骨と皮だけのルックス同様、「無駄なく音楽をやる」という自意識や無意識の噴出がここにはある。
 
 ORKからのデビュー・シングル「Little Johnny Jewel」、そして「Marquee Moon」はどちらも15分近い名演。
 それにしてもこのジャケの酷さはなんなんだ。






2010.02.16 / In Flagranti「RVNG of the NRDS Vol. 8」


 Turntable Lab Tokyo/Moonwalk Recordsへ。簡単な打ち合わせと少しの買い物。在庫にNite JewelのLPを発見。リプレスかと思い聞いてみたら、単にさぼってて出せなかったための売れ残りだそうで、おそらく東京最後の在庫だろうと購入。ほか、RVNG(Tim Sweeney)の12インチなど(写真In FlagrantiのロックEditは相当な不燃ゴミで満足。少し前に出たInvasion「Spells Of Deception」のOptimo Editなんかといっしょに聴きたい出来。古いレコード針でガシガシ酷使したい)。そうこうしているうちに、クルーエルからFran-Key, Crystal & Roger12インチのテスト・プレスが到着。せっかくなのでみんなで試聴。降り注ぐ感に立ち昇る感がフォール勝ちしている感じのサウンド・ヴュー。外の小雨とも相まって、すごくよかった。

 帰宅して、少し仕事。ベッドでレンタルしたDVDを観ていたら、いつのまにか寝てしまい、しばらくして目を開けたら、モスグリーンのワンピースを着た妙齢の女性が巨大なクモを叩き殺しているシーンであった。退屈のヘリにありがちな、くだんの安心感とともに就寝。






2010.02.12
Serena Maneesh『No 2: Abyss in B Minor』AMAZON
The Velvet Underground『New York Art』AMAZON


 Twitterに「Toro Y Moiのアルバム、予想以上によかった。アートワークからして、異常なまでの時代感(の希薄さ)。今の4ADの4倍ぐらい4ADだ」と書き込んでから、本家の『In the Flat Field』やら『13(Lucky For Some)』を聴き返し、試聴ではピンとこなかったBig Pink松田くんに薦められ買ってみて、ちょっとしたフェスがきていた4ADから、Serena Maneeshがもうすぐリリース。My Spaceで聴ける新曲「I Just Want To See Your Face」は"Lush meets キリンジ"な離れ業で、かなりたまらない。

 かなりたまらないといえば、出版界の24bitデジタル・リマスタリングを感じさせる
コレも。
 ポジの洗浄技術がスゴいのか、ゴミ取りレタッチが丁寧なのか、異常に鮮明で、わりと最近のバンドのように見えて興奮した。注文前はサイン入り/化粧箱入りエディションもあるみたいで5秒ほど迷ったが、もう2秒ほど考えると、それほど迷っていないことに気づいたのでやめた。写真を見る限り、CDや7
inchもついているようだけど、音はもう充分です。




2010.02.10 / Mr. Chop『For Pete's Sake』AMAZON


 今朝見た夢の話。
 テレビ局のディレクター兼放送作家になっている自分。冷たい雰囲気の会議室で、お笑い番組のドッキリ企画を提案している。「合板工場を貸し切って、3000トンのプレスマシン(アルミ缶とか廃車をツブすやつ)に筋肉芸人を入れ、怖がらせるだけのつもりが、機械が誤作動してしまい……というのをやりましょう。ベタですが、潰れる寸前で止まるところを、本当に潰します。ただしガーッと降りてくる合金部分は黒く塗装したマシュマロにしておいて、事故死したはずの芸人が、機械の奥から「甘いです……」とか「美味しいです……」とつぶやくオチを狙いましょう」みたいなことを意気揚々と話している。
 夢なので、次のシーンではすぐに実行に移されたのだが、スタッフ全員のうっかりが重なり、マシュマロを支える支柱は硬いままであったため、寺門ジモンの腹を串刺しにしてしまい、唸りをあげる機械から、発情した猫のような絶叫と、大量の鮮血。現場が大混乱に包まれる。
 大量の寝汗をかいて、夜中にガバッと飛び起きるという、まるで漫画のヒトコマのような体験をしてしまいました。あぁ恐かった。

 写真はMr. ChopのPete Rockのカヴァー集。つまりはサンプリング・アートを丸ごとカヴァーするという、音楽の成立のさせかた的にはかなり新しいと思える1枚。どの曲がいいとか悪いとかの話はさておき、まずは盤の存在に考えさせられる。クール。




2010.02.08 / Full Crate & Mar「Conversations With Her」


 まずはこれをどうぞ。
 わかりました? 僕は10秒ぐらいかかりましたが、わかりました。
 で、妻に見せたら、「全然わからない」と。心から残念に思いながら、「コンセントのカタチを見て、よく考えてごらん?」と促したら……

「あぁ、ブタ(の鼻)ってこと? 太ってる人(=相撲取り)はブタってこと?」

 ……。わかったのは自分のほうなのに、敗北感でいっぱいになりました。

 それにしてもコボちゃん、この時点で、7126回目。とんでもないですね。劇中での成長を少なく見積もって2年と考えれば、日数にして730日。24時間につき10回、つまり約2時間に1回はこのような(日常の)ひとコマを巻き起こしていることになるな……と、人の人生を計算することで自分の人生を無駄に消費していることにまったく気がづいていない37歳自分の部屋では、Full Crate & Marの「She Was Fly」が爆音で鳴り響いています。
 これほどパワーレスなものも珍しい、チルというよりも、リラックスというよりも、ほぼ死んでいるというか、もうたまにしか息をしていないというか、カローンも仕事を放棄する感じのメロウ・トラック。寝入りに数えた羊たちを追うようなハンドクラップの弱さがセンス抜群で、気づくとそこばかり聴いてしまう。B3にはEric Robersonをフィーチャーしたヴォーカルver.もありますが、MoodymannとかAndresとかNick DrakeとかClusterと同じ感覚で聴けるのはこのトラックのみ。










2010.02.07
Kid Romance「Kid Romance + 10Tracks Cassette」
Cosmetics「Soft Skin」
The Instruments「Same」
『Art For All 2』


 休み。まずは家族で表参道のチェコ料理屋ANOへ。移転して、だいぶキレイになっていたけれど、味は変わらず家庭的。ブランボラークはチキンとチーズをチョイス。子供にはいちじくを使った前菜を取ってやった。escalatorでの買い物につきあってもらう約束をしていたので、チェコ・ビールは我慢。口の中の油が消えないうちに移動して、本日の生ビール=DPAをオーダー。それがくるまでレコードを見て、呑み終わったらSale棚も見て、10枚ぐらい。またしても、ロクに聴かないものばかりを買い込んでしまった。

 見た目で買ってて燃えるのは、インディとノイズとハードコア。よく聴くのは薄口のジャズとクラシック。いわゆる環境(的な)音楽。こめかみのあたりに、網膜でも鼓膜でもない第三の器官があればちょうどよさそうなのに……みたいなことをTwitterに吐き出す。まだ面白さがわからないけれど、これはもしかしたらポケモンみたいなものなのかな。フォロー数をあげるゲーム? 違う?

 Kid Romanceはようやくカセットつきのものを買えてよかった。しかしうちにはもうデッキがない。
 同じくCaptured Tracksの新人Cosmeticsもゲット。やはり最高。でもたぶんもう聴かない。銀ジャケの銀にツメをこすりつけて、ニスを引いていないことを確認するなど隅々まで愛撫したのち、一度だけ音も試した後は、棚の奥まで丁寧にお送りして、さようなら。(ジゴロ聴き)
 Sale箱にあったThe Instrumentsが大当たり。Joy Divisionの「Passover」「New Dawn Fades」「Decades」「Love Will Tears Us Apart」をカヴァー。7インチの収録時間の関係で、後半2曲は付属のCDのみに収録。12インチで出せば全部入ったのに、そうしない心意気みたいなものが大当たり。チェロが入るのも好み。Nicoソックリのヴォーカルも好み。もちろんもう聴かない。

『Art For All』の2号目を入手。連載「どうして人はアートを買うのか」がたまらなく好きだ。インディやノイズのレコードに触れるたびに、まさに自分もそういう気持ちになる。1号目のHenri Cartier=Bressonオリジナル・プリントに続いて、今回はAlma Allenの"石ころ"。どうして人はアートを買うのか。なぜ自分はアートを買うのか。その明快な答えに向けての、心地よい遠回りが掲載されています。




2010.02.06 / Memoryhouse「To The Lighthouse」


「emoritakeaki」でTwitterを始めました。よろしければフォローをお願いします。

 写真はBeach HouseMemory Tapesもブッ飛ばす、今いちばん欲しいレコード。Pure GrooveではPRE ORDERとなっているのだけど、日本への入荷はいつか。幕開け感と幕切れ感がマーブル状に混濁した、ダルな女ボーカル。その声質に結びつかない太腿ジャケも素晴らしく、待ち切れない。なんだかソワソワしてしまう。





2010.02.04 / Beach House『Teen Dream』AMAZON


 ラフの返事を待つ間、ひさびさの中古盤屋巡り。肩が抜けるほど買ってやろうと、大きなカバンを持って出かけるも、何軒回っても欲しいものが見当たらない。
 Princeの初期作品『Dirty Mind』とか『Controversy』のUSオリジナルが半ライスみたいな捨て値だったので買ってみたが、帰って棚を見たら、すでに『Dirty Mind』はそこにいた。『Controversy』の国内盤は整理箱へ直行。つくづく無駄なことをしていると思う。そもそもPrinceは、ここ数年、ただ1曲「Sometimes It Snows in April」しか聴き返した覚えがない。
 ほかは袋から出して書き連ねる気すら起きないハードコア・パンク〜グラインド・コアの7インチを(重ねて)4センチぐらい。まとめて手放した人がいたようで、同じカルマを背負ったものが細長いダンボールにギッシリと詰まっていた。知識がないのでよさそうな(悪そうな)ものを勘で買ってみたが、もしかすると、これは一生聴かないかもしれない。……と、たまたまターンテーブルに乗っていたBeach Houseをプレイ。なんと落ち着く音だろう。なんと現実的な音だろう。もう少しキックが軽いほうがより好みだったかもしれないが、それでもこのプレ・ヒストリックな鳴りは得難い魅力であり、アルバム単位では『From Here We Go Sublime』以来の傑作かもしれない。単に同じぐらい淡白なジャケから連想しただけかもしれないけど……。
 ただしインナーはゴージャス。DVDつき。






2010.01.26 / New Musik『Anywhere』AMAZON


 きのうのRAH Bandにあてられて、KorgisNew MusikField Miceの2枚の12インチなど、薄めのエレクトロ・ポップを聴き返しながらデザイン作業。
 New Musikは『From A to B』ばかりが紹介されるけれど、今、わざわざ引っぱり出してまで聴きたいのは『Anywhere』のほうか。いちどカセットMTRに落としてハイをごっそり削ってから2小節ループを組んで、ジリジリのギターを入れればすぐにThe xxとかCold Caveの世界になりそうな素材集としての音ヂカラ、そしてそれでも主張してくるクリスタル・クリアなコード感のせめぎあいがナイス。……という聴き方もできる。

 図書館から、予約の入荷のお知らせ。隣の駅まで20分ほど歩いてピックアップに出かければ、帰り道はもう薄暗いはず。人からの電話もメールもなく、今日は穏やかな1日だった。






2010.01.25 / RAH Band『RAH』


 Italians Do It BetterNite JewelWashed OutMemory Tapesと続く粉っぽくもヘヴンリーなフォギー・ディスコが演出する、前向きな不毛地帯。そして、買わなくては買ったことにならないが、聴かなくても聴いたことになるノイズやサウンド・アートといった物体に、だいぶ奥まで漂白された両耳に、やたらめったら新鮮に響き渡るRAH BandのCD化3種(←RとAとHのそれぞれにAMAZONリンクを貼っておきました)を送って頂きました。
 90年代に編集されたベスト盤がヒットしたり、いろんな人がカバーしてもいるせいもあり、すっかり知った気になっていましたが、実は初めて聴く曲も多かった。ShakatakuやFreeezにも通じるクール・ファンクと、丸くラウンドしたシンセ・サウンド。今回のBlu-spec CDでは、この「丸くラウンドした」というのが思いのほか大切で、やはりテープに録られたダンス・ミュージックは最高にすばらしい、ということを再確認。

 長い身体を丸められた挙げ句、チップボールの化粧箱に幽閉され、スタジオへと出荷されるアナログ磁気テープには、命があり、意思があり、延々と同じ音が自分に刻まれることを嫌悪する。イーヴンなキックや冷たいプリセット音に退屈を覚え、その退屈を紛らわすために、ケーブルを走る温度やニュアンスをも取り込もうと、努力する。

 その意味、いわゆる作曲の苦手な「ダンス・ミュージック限定のアーティストたち」は、無理をしてでもテープに録るべきだと思う。自分でミラクルを産み出せないのであれば、よりミラクル(というか事故)の起きやすいフォーマットを選ぶべきではないか?(採算度外視のススメ)。Sir James Paul McCartneyにも認められた才能が30年も前に録音した、この切ないエレクトロ・ポップを聴き返しながら、そんなことを(やや辛口に)思いました。








2010.01.20
V.A.『POST NEWNOW』AMAZON
Kダブシャイン『自主規制』AMAZON


 ひさびさの日記。最近あったことを箇条書き。

◎クボタさん本人には極めて好評であったが世間的にはどうなのかわからず不安な『ミックス・シーディー』のジャケットに続き、Crue-L Recordsの新しいコンピ『POST NEWNOW』(写真)のアートワークをやりました。ようやく店頭に並びました。
 これ、もともとはMax EssaのMix CD用にアイデアを出したものの実現しなかったデザインで、あの頃から考えると、半年ぐらいかかったことになる計算。本当に多くのトライ&エラーがありました。
 写真だけだと、このシンプルな2色刷りにのどこにそんな手間が?……なデザインに見えますが、実はこれ、薄いダンボールの4つ折りの中央にピッタリ合うよう5mmの穴を開け、ふたつ折りのブックの中央にも穴を開け、CDには最初から穴が空いているので、それらをネジとナットで通して留める、という近年では珍しいぐらいの特殊仕様なのです。
 また、DJへの災難を描いたヘッポコ線画が、インナーシートでは実写になるというグロ・ジャケでもあり、しかも10枚に1枚の確率で……(以下自主規制)。

自主規制といえば、Kダブシャインさんのベスト・アルバム『自主規制』(写真下)のジャケットもやりました。こちらももうすぐ店頭に並びます。梅ちゃんこと梅川良満くんの協力を得て、Kダブさんをパイプ椅子拘束! 軟禁タコ殴り! 水攻め! そして架空の拷問具を制作しての脅迫、それでも屈しないKダブさんのゆく末は……なストーリー仕立てのブックレットを制作。なんと撮影は、ウチの実家の車庫でやりました。

ほか、もう1枚店頭に並んだばかりのCDがあるのだけど、暗黙の守秘義務があってそれは書けず。
 ……と、デザイン仕事はCDがひと段落して、いまは装丁のラフ出しを延々。文庫本は初めての経験。左右105mmのサイズ感がとても新鮮。

Citrusをいっしょにやっていた正田くんから借りた、長尾明寿『ホロ酔い酒房』というグルメ漫画がすごかった。「室長」と呼ばれている主人公が全国各所に味の探求に出向くのだけど、ゴーヤに挑戦しては「ニガ〜〜〜!」と顔をしかめ、それだけであればMoody Bluesを徹頭徹尾のブルース・バンドだと思い込み最近まで聴いてこなかった自分と変わらないが、こいつはサワー以外の「焼酎」を、初めて呑むという。なおかつアルコールに弱く、しょっちゅうカウンターで寝てしまう。山岡岩間と比べるに、お前やめちまえ! と叫びたくなるような体たらくだが、これはこれで、特定のファンがついているのだろうか(2巻だけ読んだので設定がよくわからない)。
 すぐに星を見上げたり季節の変わり目に敏感なところは、『クッキングパパ』にも近い読後感。ただし料理はまったくしない。つくづく不思議な作品。

I Love Youの「Pillow Talk」という曲がよかった。Fran-keyのトラックの上で、キツい徴兵を終えてみたら大好きだったパンク・ムーヴメントも終わっていて……みたいなボーカルが転げ回る、ボッソボソでガッサガサの享楽ディスコ。「This Is The Best Birthday Ever」というトラックも、最高の誕生日がまったく想像できない仕上がり。パイプユニッシュの原液に漬け込んだファンカラティーナのレコードが脳裏に浮かぶ。かなり鮮明に。
 90年代の初めの頃にいっぱいあった感じのアートワーク、そしてJoyful Noiseというレーベル名は、いくらなんでもちょっと……という感じだが、音はあんまりない感じ。

mixiにSteely Dan「PEG」リハーサル映像音声を差し替えたMADのことを書いたら、マイミクの千原航さんから、同じコンセプトで作られた、Radiohead「15 Step Overdub」というのを教えてもらった。……が! 自分はRadioheadの原曲を知らない。前述Moody Bluesと同様の凝り固まった先入観、「いちばん痛いのは俺だー。だって俺がいちばん傷つきやすいからー」みたいなツイットに正座でつきあわなきゃいけないんでしょ? というのがあり、いままでパスしてきたからだ。
 しかも、この映像で観れる「冗談」が、完璧に自分好みの音だから恐ろしい。こんなバンドが本当にいたら、大ファンになってしまうよ(ボーカルはArto Lindsayじゃないか?)……というわけで、ますますRadioheadが遠のいてしまった。

(あえて漢字で)『怪獣達の居る所』の試写にもいってきた。小粒だけど、後味が長い感じでよかった。非常に高度な合成技術を使ったリアルな表情と、着ぐるみ感のある動きのミスマッチ。本当にセンスのいい金の遣い方だと思う。
(あえて平仮名で)『あばたー』なんかのVFXが創り出すリアルさというのは、細かな座標設定や縮尺からレンダリングされた、大人のリアルさ。だから、そのリアルさで「かいじゅう」を動かしてしまうと、まだ子供の主人公には、とたんに「見えていないもの」として映ってしまったと思う。恐いものは実際よりも大きく見えるし、かわいいものは小さく見えているのが子供。興味のないディテールには、恐ろしく無頓着であるのが子供。ストーリーよりなにより、その視線の確かさに感動した。構図もロー・アングルが多かったように思う。

『かいじゅう〜』は諸事情あって吹き替え版を観たのだけど、主人公マックスのアフレコは、こども店長が担当していた。
 こども店長といえば、ついこないだ、TOYOTAのショールームにて、等身大の立て看板と肩を組み、写真を撮ってもらっているオバサンを目撃した。シャッターを押しているのは息子。同じく10歳ぐらいの男の子。他人事ながら、かなり複雑な光景だった。






2010.01.17 / Pet Shop Boys『Christmas』AMAZON


 某新人アーティストの雑誌広告を大量にレイアウト。素材は共通しているが、すべて版形/掲載サイズが違うので、ひとつひとつをバラバラに作ると、かなり面倒かも……と、しばし熟考@サウナ。で、閃きました。
 まずは巨大なInDesignドキュメントを用意し、ズラリとトンボだけを並べてしまう。これなら素材のハンドリングもバッチリ。もちろん合成フォントの同期なども考えなくてよい。で、大きなものから順番に組んでゆき、最後はpdf保存したデータをIllustratorで開き直し、入稿先の数だけ別名保存。
 こうして書き出してみるとなんてことはないかもしれませんが、たぶん映画1本ぶんぐらいの時間は短縮できたのではないかと。
 時間の限りに磨きたい仕事、スピードが求められる仕事の両方に、100%で応えるためには、こうしたワークフローの見直しが最優先。俺も随分と冷静になったものだと感慨深い。この方法を発見したときは、ちょっとした快感がありました。いっそのこと、100パターンぐらいの「ヴァージョン違い」の制作依頼がこないものか。

 ヴァージョン違いといえば、「It Doesn't Often Snow At Christmas」。昨年末の最新シングル『Christmas』収録のNew Versionは、よくもこんな軽薄なポップ・ソングが書けるとクラクラきたほどの超名曲を、ベースラインのアクセント変更&シャンパン・ゴールドにプレミアムなS.E.を投入することで、聴く者の頬を耳まで赤らめることに成功している。「Bing Crosby! ボクの声が聞こえるか!」というサビ前の歌詞は、何度聴いてもキュンと恥ずかしい。Coldplay「Viva La Vida」のカヴァーも、原曲を擬人化した際の眉間の皺が、いい感じにツルツルになっていてナイス。
 Pet Shop Boysのシングルはほぼ買っているつもりだけど、『Fundamental』収録の「Minimal」を最後に、アナログよりも、CDシングルを探すようにしている。よりフラットで、よりコンパクトで、よりレディメイドで、なるべく大量生産で、なるべく価値がなく、しかし決して土に還ることのないものを。










2010.01.10
『ANP Quarterly Vol.2 / No.3』AMAZON
V.A.『Techno Trax』
David Sylvian / Holger Czukay『Flux + Mutability』AMAZON
S.L.A.C.K.『Wha La Bout』AMAZON


 ひさびさの休み。自由ヶ丘で買い物。神社へ続く裏通りを歩いていたら、誰かに聞いて名前だけは知っていた「自由ヶ丘バーガー」を発見し、昼食。レバー・ペースト入りのものと、アボカド・ペーストとパクチー入りのものを注文。予想以上の背の高さに、どこから食べればいいのかと戸惑いましたが、どちらも本当に美味しく大満足。これが夕食でも全然OKな洋食感。手狭なテラス席も気持ちよく、次回はつけあわせのフライド・ポテトで、まずはビールを飲みたい。

 夕方、ふらっと入ったブックオフで、たくさんの雑誌やCDを買った。
 雑誌は『アイデア』や『デザインノート』のバックナンバー。この店にあるとかなり高く感じる値段だけど、ヤル気の対価としては安い。
 逆にCDは、偶然開催されていた3枚¥1000の特別割引セール価格に惹かれ、¥500均一のコーナーをくまなく。
 Etron Fou Leloublanの『Les Poumons Gonfles』。Chet BakerCandy』。FugaziSteady Diet of Nothing』。Crowded Houseのベスト。こないだ買った超大判雑誌『ANP Quarterly Vol.2 / No.3』で表紙&特集されていて聴きたかったBonnie Prince Billyの『Beware』。そして最大の収穫は、ジャケのイナたさと内容の虚無に惹かれてコレクトしているZYXレーベルのテクノ・コンピ『Techno Trax』の001番。
 これだけ買って¥2000はかなり安い。

 休みといえど、帰宅後は仕事。新しくやることになったトライリンガル・フリーペーパーのタイトル・ロゴを練りながら、『Flux + Mutability』をプレイ。Jaki LiebezeitやMichael KaroliなどCANのメンバーも友情参加した、最高のコラボレーション・アルバム。一時期よく聴いていたのだけど、最近またリピートしている。ブルー・グレイの水たまりに映り込む満開の桜や、ガラス細工に絡みつく細く長い女性の指を想わせる、パステル・トーンのアンビエント……といっても、退屈や脱力を楽しませる種類のものではなく、すべての音にロジカルな必然性を感じさせ、5秒先への期待を高めつつ、呼吸の回数を奪ってゆく、とても能動的なアルバム。こういう音楽を作ってる人って、今いないのかなぁ。(もうアナウンスしてもいいと思うので書くけれど)今年4月に出る高井康生のインスト・アルバムに期待です。

 S.L.A.C.K.はココやけのはらさんが年間ベストに挙げていたアルバム。YouTubeで試聴して、即購入。アバラ骨がガタガタのノン・クオンタイズ・ビートに、ものすごいタイム感のラップが乗る。前作『My Space』はThe Spinners「Could It Be I'm Falling In Love」泣けるイントロを使った「Hot Cake」や、いきなりTodd Randgrenが歌ってビビる「Train to Tokyo」など大ネタが耳を惹く。Pere Ubuみたいなジャケットもすごくいい。





2010.01.09 / CFCF『Continent』AMAZON


バンコック・デンジャラス』をおちょくりたいのか、Boris Dlugosch「Bangkok」のジャケにニコラス・ケイジがいたり、その名もThe Sophia Loreniansという、未来へ繋ぐ気のまったく感じられないバンド名のバンドがデビューしたり、自らを貶め、ペシミスティックな失笑を強要してくるセンスやシーンというのに根深い過飽和を感じがちな昨今、Fleetwood Macをカバーし、どう聴いてもそうしたかったからそうしたようにしか聴こえない「Strings Of Life」のカバーもどきをブッ放してしまうCFCFのフル・アルバムは、眩しいほどの素直さと温かさをもって、僕らを呑み込む。
 これはありそうでなかった!……と書くと、まるで俺が待っていたみたいだが、決してそんなことはなく、気づいたら、ふだんの生活に、適度な音量で鳴っていた、みたいな座りのよさがエクセレント。
 構築したのちに間引いたのでもなく、あえて音を足さないのでもない、天然の「できたから出しました」感。シンプルなようでいて、かなり計算された音、というのを計算せずにやっている感。ダンス・ミュージックでありながら、DJにはわからない音かもしれない感。もしかしたら、そんなにいいものじゃないかもしれない感……というギリギリ感……。
 2009.07.03でも書き、思わず御近所Max Essaにも7インチをプレゼントした「You Hear Colours」も収録。いまだ「なぜこれで成立しているのか」という異彩を放っています。





2010.01.07 / John Wood『Until Goodbye』


 江森の2009年の年間ベストが、ココココにアップされています。
 最近も聴いている(つまりはまだデスクや床に置いてある)ものから選んでしまうのはいつものこと。
 なにを選んでも後悔が残るのだから、セレクトそのものよりも、なぜオレはコレが好きなのか、にフォーカスした感じです。
 MGMTのPVは本当に感動的ですね。

 ちなみにリイシュー部門の年間ベストはStone Roses。やっぱり聴いたときの震えかたが違いました。プレイ・ボタンを押す前に、少し大きく息をする感じで。
 今年はさらに大きく深呼吸しなくては聴けないであろうBen Watt『North Marine Drive』のベッドルーム・ラジカセ・デモ全曲(ロンドン・リバーの氾濫の気配&窓を打つ雨音入りの超ロウな録音/途中でガット・ギターを置いてトレイシーからの電話に出たりもする)が入った2枚組デラックス・エディションが聴きたい。(注:ありません)

 話は戻ってStone Roses。DISC1と2を続けて聴きながらずっと考えていたのは、「あまり聴いてはいけない」ということでした。
 自分にとってのこの作品というのは、Dream Academy『Remembrance Days』とかMomus『Don't Stop the Night』とかSaint Etienne『Foxbase Alpha』同様、耳年齢15歳な音楽的思春期の透明な思い出が刻印された作品であり、なるべくその当時のイメージを、いまの耳を通したサウンドのイメージに、汚されたり、「上書き」されたくないんですね。
 面倒な話ですが、30代も後半になると、「死ぬほど好きなので、死ぬ前にしか聴けない」というアルバムが出てくるのでした。





2010.01.06 / DJ Penny『Alternative N.C.C Style Vol.2』JET SET


 正月を潰したラフ出しに好反応。ホッとひと安心。
 ドッと疲れが出たのか、身体が重く、試しに体重計に乗ってみると、恐ろしく増えている。まぁ、何日も座ったまま酒ばかり呑んでいれば当然のことか。

 写真は、FPMの記事でもピックアップさせてもらったマイクアキラ「Never Change」のリミックスも聴けるDJ PennyのMIX CD。Buddha Brand「人間発電所」ネタKing James Version「I'm Still Love You」の8小節ループ(!)を含む大ネタ満載のトラックに、コトバによる試金石、というか根性焼きのようなラップが煙たくエンターテイン。最高すぎて、何度も何度も聴いている。
 シークレット・トラックのMC O.M.Eはシモネタを超えた、シモそのものなラップ。夕飯を準備する家族の嫌悪感がピーク。が、数々の放送禁止用語の直後に流れるたおやかな水流の音が、非常にデザイン的でもあります。さすが○ちゃん!

 それはそうと、カサヴェテスのBOXがすごく欲しい。





2010.01.05 / Joan Liftin『Drive-Ins』AMAZON


 運転免許のない自分にとって、マイカーの助手席に招いてくれる人というのは、とても輝いて見える。毎月の駐車場代やガソリン代、車検にかかる費用、路駐の罰金や通行人を轢き殺すリスクなどの生涯コストを考慮すれば、タクシーに乗り続けたほうがずっと経済的……というのは、もはや周知の事実だと思うのだけど、華麗にハンドルをさばきながら、スマートに高速料金を支払いながら、時速60kmを80kmに感じさせるBGMにまで気を配ってくれる彼らに向かい、その事実を言葉にするのはあまりにも恩がない。また、同じ男として、そんなロマンのないことは言えない、という空気もある。
 また、車がなければできないことも、山ほどある。
 なかでも、「ドライヴ・イン・シアターで映画を観る」というのは、かなりの上級ドライバーのみに許された特権のように思える。マイカーを転がすことが自分にとっての憧れであるとすれば、携帯を切り、エンジンを切り、フロント・ウィンドウ越しに映画を観るなんてことは、夢のまた夢。映画が気に入らなければ直帰すればよいし、興奮で眠れないのであれば、そのままドライヴを続けてもいい。なんと贅沢かつオトナな遊びなのかと夢想する。

 そんな気持ちも手伝い、Joan Liftinの写真集、『Drive-Ins』は大のお気に入り。
 日本で言うところのサービス・エリアに広がるスモール・コミュニティと、明け方や夕暮れの淡い光。決して満たされることのないロード的なシーンの連続が、土色のいがらっぽさと、その奥に揺れる蒼色の感情を、とても両義的に表現している。とくに後半に登場するドライヴ・イン・シアターのシリーズは絶品。そこに映る人々が、それぞれの愛車という繭(まゆ)へと籠る際の喜びというものを確実に捉えていて、気絶するほどに美しい。
「上映中に立つんじゃない」と巨大なターミネーターのアップに睨まれながら、両手いっぱいのジャンク・フードを調達するオヤジも、バズ・ライトイヤーの大きさに歓喜する子供たちも、誰もが束の間の「ほかになにも考えなくてもよい時間」に依存し、全身を沈殿させている。

 デザイナー的には、イタリック主体のポップなフォントと、ウレタンを包んで厚みを出した表紙のフカフカ感はマイナス・ポイント。しかし、ふとベランダから眺めた遠く家の窓の明かりに胸が切なくなる貴方や貴女には、それでも見て頂きたい1冊です。

「ほかになにも考えなくてもよい時間」といえば、年末のテレビで、190kgにまで太ってしまった女性が、50kgまでに痩せるというダイエット番組を放映していたのだけど、とくに好きなタイプの企画でもないのでチャンネルを変えようと思ったその瞬間、その女性が、そこまで太ってしまった理由に関して、すごく鮮烈な話をしていた。

「食べすぎると、頭がボーッとして、なにも考えられなくなる。その状態が好きだった」

 つまりは人生の不遇に疲れ切り、マイナス指向ばかりが頭を駆け巡る日常に、透明な空白を呼び込むための、暴食。欲しいのは甘みでも辛みでもなく、満足感ですらなく、強制的なまでの「頭からっぽ」状態であったというのに、納得・感動してしまいました。
 やはりなにごとも、当事者にしかわからないことがあるものです。

 というわけで、免許。もういちど取りにいってみようかなぁ……と。







2010.01.04
Is『Awewsome Vistas # 8』
Lazarus『The Trickster』
tUnE-yArDs『BiRd-BrAiNs』


 正月気分を大ナタで断ち切るように、'00年代の最後に買ったレコードのことを書きます。

 IsはQuasiJackie-O Motherfuckerなどのメンバーが集まった総勢13名によるユニット。エクスペリメンタルかつピースフルな鳴りの長尺インストを2曲収録。この手の作品にありがちな作為がなく、70年代のロフト・ジャズ〜スピリチャル・フォークのような質感が好ましい。ダバダバでもキラーでもなく人気のないSARAVAH作品を想わせる瞬間も。

 Lazarusは非常にディープな声質の宅録シンガー・ソングライター。メロディ・ラインにもオリジナル・ブレンドなコクがあり、何度か続けて聴き込んでみたいと思わせる磁場のようなものがある。Antony and the JohnsonsとかA Whisper in the Noiseが好きな人は好物なはず。この人の帰りを、デカい蛾が待っていそうな感じ。

 tUnE-yArDsは、幼少期から演奏していたというウクレレを抱え歌う女のレコード。Janis JoplinPatti Smith同様、リンスの香りがしたら逆にガッカリしそうな剛毛の妙齢が目に浮かぶ、ウォームかつフリーキーなボーカルに、凝ったアイデアと飾らない録音による生活音やサンプリング・ループが絡む。演奏力のないHermeto Pascoal的な変態フレーズが楽しい反面、ブリティッシュ・フォーク好きも反応しそうなメロディが聴こえたりもする傑作。

 以上3枚、すべてアーティスト自ら、もしくは近親者によるシルク・スクリーン/ハンドメイドによるスリーヴ・デザイン。とくにtUnE-yArDsのものは労作で、フリマで購入した4枚1ドルの安盤のジャケを解体し、裏返しにしてリサイクル(自分のは『White Nights』のサントラだった。Lou Reedは嫌いか?)。そこに、わざわざ12枚に切り刻みパズル状にした歌詞カードが封入されている。

 この、「ジャケットを買う」というモード。果たして10年代はどこまで加速するのか。





2010.01.01 / AHNY_2010_tiger_woods.jpg


 1980〜2009という20年間は、ポップ・アイグラス製造業者の黎明期〜繁栄期でありました。
 が、2010となった今年、彼らは大切な右目を「棒」に潰されてしまい、ドン底へと転落。ファクトリーの従業員全員が「1」を呪い、2040年までの30年をどう食べてゆけばよいのかと頭を抱えている………………………わけがありません。やはり彼らは、これまでの経験を糧に、太く育てた危機回避能力を武器に、また新たな商品をクリエイトし、劇的にサヴァイヴしてゆくのです。
 どこもかしこも暗雲のたちこめる'00年代でしたが、今後は僕らも彼らを見習い、心配や不安をカカトで踏みつけながら、ゲンコツで殴り倒しながら、逞しく遊んでゆきたいものですよね(←語尾に不安を残した文体)。

 とにもかくにも、この世は人との縁で廻っています。
 みなさま改めまして、どうぞよろしくお願い致します。

 写真はtone twilightからのe-年賀状になります(クリックで全景)。
 明けましておめでとうございます。






管理者プロフィール:
江森丈晃(Takeaki Emori)
グラフィック・デザイナー/ミュージシャン/ライター/編集者(順不同・日替わり)

ソニーマガジンズ〜宝島社での丁稚時代を経て、98年、デザイン事務所 "TONE TWILIGHT(トーン・トワイライト)"をスタート。
CDジャケット、アパレル、エディトリアル、編集業を含む装丁、少々のwebなどを手がけ現在に至る。
また、90年代初頭から中盤まで活動していた"CITRUS"というバンドのメンバーでもあったため、リミックスや楽曲提供など、ミュージシャンとしても活動。2007年末にキャリア初のフル・アルバムとなるyoga'n'ants『Bethlehem, We are on our own』を発表。ロング・セールスを更新中。事務所と同名のインディペンデント・レーベルの代表でもある1972年11月14日生まれ。健康な男性。

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MdN Interactive内のコンテンツ「これがデザイナーへの道」の取材を受けました。インタヴューが掲載されています。



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◆全曲解説
特設ページからどうぞ。説明しなくても伝わる音楽を作ったつもりですが、長いです。

◆雑誌掲載情報
装苑』『ダ・ヴィンチ』『bounce』『Invitation
WEEKLYぴあ』『PHONO』『FUDGE』『MUSICA』『VICE』『m/f』『SOUND&RECORDING MAGAZINE』『TVブロス』『EYESCREAM』『MARQUEE』『REMIX』『barfout!』『RIDDIM』『SWEET』『SPRING』『CDジャーナル』『ギター・マガジン』『カーセンサー関西版』ほかに掲載されました。ありがとうございます。

◆webマガジンなどの掲載情報
http://neojaponisme.comに江森のインタヴューが掲載されています。
bounce.comのインタビューがアップされています。