2008.09.26
Bjorn Torske「Kan Jeg Slippe?」
Guillaume & The Coutu Dumonts「Selection Surnaturelle」AMAZON

 延々と自宅仕事。自分の原稿。人の原稿の編集。新しい本の企画書制作。たまにデザイン。新しい名刺を作ったり、商品を発送したり。たまに外に呑みに出ると、秋っぽい酒が旨くて困ったり。今日も打ち合わせの体で大好きな居酒屋を予約している。いまからとても楽しみ。

 2008.08.20でお伝えした、Citrusのコンピレーションのための音源発掘も極めて順調。当時お世話になっていたエンジニアさんに自宅まで遊びにきてもらい、娘にケーキのお土産など頂きつつ、計20数本のDATを譲り受けた。同時に、マンションの裏庭からは以前埋めたニューナンブ22口径といっしょに初期ライヴの映像が入った8mmも何本か出土し、そのラベルを見ると、"with TV Personalities"とか、"v.s. Pooh Sticks"だとか書いてある。ドラムのハイハットの留め方を知らず、何度もそれが膝に落ち演奏をやり直している(まだ新宿の)LIQUIDROOMの映像もあった。
 音も演奏も本当に酷いはずなので、なんとか曲として聴ける部分と、酷すぎて笑う部分のカットアップ&コラージュとして使おうと思っているのだけど、観たらなにかが壊れたりハズれたりしそうで心配。
 ふだん聴く音楽には、まさにその、なにかが壊れたりハズれたりしそうな部分しか求めていないクセに、そこに自分が映っているとなると、やはり尻込みしてしまう。あのバンドの解散の要因は、そこにもあったのかと感慨深い。

 Bjorn Torskeの最新曲「Kan Jeg Slippe?」がスゴすぎて、12インチは不作、というか不感症に。まっさきに思い出したのはGuillaume & The Coutu Dumontsの「Ndank Ndank」(写真下)だけど、そこから脊髄とアバラを除去するとこうなるか? って感じのダズル・
ビーツ・フロム・多肉植物支配系ハイディング・プレイスの超傑作。グリーン・ラベルのデザインも安っぽくていいんだ。


2008.09.20 / Gidon Kremer『Astor Piazzolla: El Tango』AMAZON

 終わらない打ち合わせ@常磐響邸。いままで常磐さんにはインタヴューさせてもらったり対談に参加してもらったり原稿を書いてもらったりはしているものの、写真をお願いするのは初めて。自分は会社やチームに属していたことがほとんどない高卒のため、気持ちよく敬語を使いつつ、笑いながら仕事のできる人間こそは、宝。
 迫る納期、絞り込めないアイデア、際限のありすぎる予算など、問題は山積しているが、楽しい時間が過ごせるのは間違いナシ。いまから撮影日が楽しみでしかたがない。そして打ち上げも。

 帰宅後、ラフを組みながら聴いていたのはGidon Kremerのピアソラ集。バンドネオンはほとんど使われず、硬質なヴァイオリンとギター、つまりは弦の響きを基調に、あの芳香や深淵をギア・チェンジ。本来あったはずの"記名性"が、月日に蝕まれ、熟れて熟れてボトリと地に落ちた際、八方に爆ぜ、もう原型は留めていないながらも、あたり漂うその香りには抗い難く、つまりは"機能性"だけが、空気のなかにこびりついている……みたいな種類のリアル・ビューティです。
 正直本家のピアソラは『La Camorra』や『Tango : Zero Hour』を始め、リハーサル音源を収録した『Ensayos』(すごい)なども聴いたが、ある時期からパッタリと掘るのをやめた。もちろんそれは飽きたからではなく、自分の生活には、あの濃密な音楽と対峙(対話?)するための特別な時間というものが少なく、聴き流せないものに疲れた、というのが正直な理由。その点、この盤は優れている。アロマのような効能がありつつ、適度な集中力までを授けてくれ、うっすらと開いていた口は、次第に、しかし確実に閉じられる。


2008.09.17 / 今森光彦『ネイチャーフォト・ギャラリー〜不思議な生命に出会う旅・世界の昆虫』AMAZON

 30年に渡る写真家/旅行者生活で撮り溜めたものから22点を厳選し、その写真が撮られるまでのドキュメンタリーを加えた溜め息ものの昆虫写真集。
 なかなかこの感動を伝えるのは難しいのですが、ページをめくると、まず旅行記/奮闘記としての文章があり、肉眼での確認すら難しい昆虫を"張り込む"という、ただならぬ苦労が語られ、その次のページには、まさにその写真が見開きで掲載されているという、誰しも息を呑み、贅沢を感じる圧倒的な構成で、次へ次へとページを急がせる。パラパラと飛ばし読みをし、できれば写真だけを凝視していたいのだけど、この素晴らしいコントラストが、そうはさせない。

「(前略)肝心のキサントパンスズメガは、何日経ってもランの花を訪れない。(中略)なかば諦めかけたある日、ガチャンという自動撮影装置のシャッターの音とともに、ストロボの光が炸裂した。不覚にも僕はその一瞬を見逃した。しかしなにかがやってきたことだけは確かだ。帰国して、現像されたフィルムを見て興奮が漲った。そこには、まさしくキサントパンスズメガが彗星ランの花を訪れている瞬間を捉えた、初めて見る映像が映し出されていた(後略)」

 で、そのあと写真ドーン!
 
 いま半分ぐらい読みましたが、もったいなくて休憩してます。鳥肌の処置に困る。




※)こいつは高校時代の美術の授業のレリーフ制作でも『Duke』のジャケを彫った。

2008.09.16 / Peter Gabriel『So』AMAZON

 ラジオを聴かず、歌番組も観なかった幼少期を取り戻すかのように、レコード・レンタル→ビデオ・レンタル→レコード・ショップとバイトを変え、その後は音楽雑誌の編集業に。そして自分でも音楽を録るように。そしてデザイン資料としてのレコードも買うように……という、たぶん平均よりは随分と恵まれた環境で音楽を摂取してきたにもかかわらず、自分には聴いていない"ド定番"というのが山のようにあって、この『So』もそのなかの1枚であった。
 いままで何百回も目があったジャケにも関わらず、手に入れたのはつい最近。中古CD屋の棚に並んだ"背"の部分のコバルト・ブルーが、自分の記憶のなかの表1ネイビーと違い、んん? と手に取ったその盤の捨て値に笑い、そのふたつの青を担当したデザイナー、
Peter Savilleのディテール見たさに持ち帰ったのでした。
 音楽というのは、ありとあらゆるものを並列に聴き散らかさないと、それぞれの長所もツボも聴こえてこないというのがここ10年の持論で、新譜を10枚買ったら最低3枚は知らない名前の中古盤を買うとか(その逆とか)、パンクやHCに散財してしまったら、必ずクラシックやソウルもチェックして帰るとか、そうことを自分でも実践してきたのだけど、"いつでも聴ける"は"いつまでも聴かない"。どうしてもヒット作は後回しになってしまい……という人は意外に多いのではないでしょうか(←いきなりの歩み寄り)。
 というわけで、オリジナル盤の発売から22年後の今日、「Red Rain」のEdit感あるイントロとか、Kate Bushとの淡白な絡みだとか、プロデューサーDaniel Lanoisの適材適所だとか、そこここに聴けるモダン・アフリカン・ミュージックからの感染症だとかを爆音で鳴らしているわけですが、いちばんの感想としては……

「歌がいらねぇ」

 ……というものでした。
 これ、できれば全曲のインストが入ったDeluxe Edition(出てません)を買って、そのDisc 2(出てません)をChris ReaWilliam Pittなんかのオープン・エア&チルのセルフ・マッピングで評価したかった。
 そういやこの人がいたGenesisも、後期Zombiesのような英国ポップの名盤にしか聴こえないファースト『From Genesis To Revelation』など数枚しか手元に残っていない。Genesisは熱狂的ファン(※)の推薦を信じ、後釜のPhil Collinsが歌っているものを含め随分買ったのだけど、ほどなくそのほとんどを手放した。もちろんそれも、かなりの捨て値で。


2008.09.14 / DJ Sprinkles『Midtown 120 Blues』AMAZON

 アルバム単位では『Hercules And Love Affair』に次ぐ愛聴盤となりそうな先祖返りダンスの傑作。あっちがリリシズムをブーストしたケミカルでホワイト・ラインズなNW/NYガラージだったのに対し、こっちはもっとスタイリッシュで、アロマや美容液にもこだわった、いわばクール・ビューティなサウンド・メイキング。(べつに無理して比べることもないんだけど)共通項はといえば、叫んでも叫んでも何も起こらない、歌っても歌ってもなにも変わらない、死んだあいつは戻らない、出てったあいつも戻らない、でもグルーヴするんだよ、だってそのほうが寂しそうに見えないだろう? ……といった寒々しさや飢餓ということになりますが、流石はベテラン(の余暇)、そこに絶妙の安定感や多幸感を差し込んだ、a.k.a Terre Thaemlitzならではのディスコティーク解釈となっています。
 泣いてるんだか笑ってるんだか痛いんだかわからないアートワークも完璧に内容とリンク。これは長く聴きそうだ。

 さて、明日から表参道SPIRALで長崎訓子展覧会『merchandise me』が始まります。自分とのコラボ(というよりバトル)によるポスターは、ナンバリング入り35部限定での販売です。長崎ファン(そしてボールペン画好き、コラージュ好き)は、ぜひお早めにお買い求めください。


※)友人編集者からのタレ込みで見つかりました。この映像には今日の昼飯のメニューまでを決められてしまい、いやぁ、なんでも手に入ってしまう世の中で恐ろしいな……と。
 次はPet Shop Boysのふたりが腕枕を譲ったり譲られたりしながら「Suburbia」の原型を鼻歌して、
「あ、名曲かも…?」と顔を見あわせる瞬間の映像と、3曲入りのニュー・アルバムが超最高だったLindstromが初めてのシンセの説明書をめくっているときの表情が見たいです。リンクありましたら送ってください。前者は無修正希望です。

2008.09.11 / Boz Scaggs『Silk Degrees』AMAZON

 プレゼンもブレストもナシで締め切りだけが決まっていた年末発売のCD3枚/装丁1冊の同発モノに、ちょっとしたノイローゼになるほどのアイデア練り。確実に売れる企画なのだけど、デザインのよさで1000枚なり2000枚なりを上乗せできれば……という使命感と責任に押し潰されつつ、以下、職場放棄の現実逃避。

 米ネブラスカ州のオマハは、夜になると恐ろしく真っ暗闇なド田舎。スミベタで真っ黒のポストカードが、"Night time in Omaha"というキャプションつきで売られているそう。

〈最初に暴れたのはThe Whoだ。俺たちもやってみたら意外と楽しかったんだ〉。
 デスクトップに常駐している"原稿プール"というフォルダから、これだけが書かれたrtfテキストが出てきたのだけど、果たしてこれは誰の言葉なのだろう。そして俺は、これをどうしようと思っていたのだろう。

 ダウンタウンが食いものに絡んだ企画が、どうしようもなく、たまらなく、しこたまに好きだ。
『ごっつええ感じ』の"10万円ぶん食べよう"。『ガキの使いやあらへんで』の"絶対においしい"シリーズ。しかし、"やるき茶屋のジョッキの限界"という好企画をやった『リンカーン』という番組で放映されたという、"超巨大なペヤング・ソース焼きそばを同じ縮尺のヤカンで作って食べる"という動画はいつまで探しても見つからない(※)。それが観たい。観たすぎる。

 Boz Scaggsの30周年記念リマスタリング/ボーナス・トラックつき再発が、驚くほどロックな音像でビビる。ドラムが劇的に硬く、Leaders of the New School「The International Zone Coaster」ほかにサンプリングされた名ブレイクも、ビックリするほどの分離感。Moshe Brakhaの写真によるあまりにも有名なアートワークにしても、こんな現実感のある写真だったんか? という印象。珍しくライナーを読むと、ボズ御大は、このアルバムのタイトルを『Paradise and Lunch』(もちろんRy Cooderの)にしたかったという、かなりいいエピソードが。
 それにしても、ヴォーカルの入りといっしょに突如スウェイしまくる「What Can I Say」の冒頭30秒は、何度聴いても困惑してしまうほどの鮮やかさですね。ドラムとベースで表現できる範囲のリズム・メイクに於ける、ひとつの沸点だと思います。


2008.09.07 / The Roches『Another World』

 通称「崖」こと『崖の上のポニョ』を観てきた。
 渋谷や新宿ではなく、南町田の巨大ショッピング・モール内にある劇場が快適だったというMaxファミリーの感想に感化されて。
 わざわざセル画にこだわったという温かみのある動きにはそれほど心動かされなかった……というよりは、
スポーツ選手のドーピング疑惑が浮上するたびにドーピング推奨下での肉体改造選手権を期待してしまうのと同じ感情で、ピキピキのCG導入ヴァージョンが観てみたくなってしまったものの、ストーリーは想像以上によかった。
 シンプルな話なのでいくらでも深読みできるのだけど、基本は、夫の海上単身赴任から育まれたと思しき、息子の(少し早い)自立に共鳴する、強い母親像の話。荒れる海に水没しようとする町を目の前に、危険を承知で小さな車をブッとばし、自分と息子こそが、眼下に広がる不安を取り除くための「灯台」になるという話。母親リサの職業がホスピス職員というところからもその献身は強調されているし、そもそもそういった自己犠牲〜利他的行為は童話や絵本のド定番だから、その部分では、驚くほどにヒネりなくストレートなお話だと言える。
 復興不可能なほどに沈んだ低地の家を想い、ジブリ的でないとする意見もあるにはあると思うのだけど(そうなった原因が原因だし)、それも、ボートを漕ぐ、逞しい町民たちの汗にてクリア。震災から立ち上がる強い日本人像が、ベタとも言える強い線にて描かれていた。
 ハイライトは終盤、リサとポニョの母親との長話を遠目に眺めるカット。そこでの緊張感がとても心地よかった。W母性の至近距離による、ポニョと息子を想っての、ゆく末懇談会。受け入れる勇気と送り出す決意。終映後、頭のなかでさまざまな台詞を当ててしまった。
 ポニョの愛らしさについては娘の領域なので、大人はパス。でも、ハム入りインスタント麺はとても食べたくなりました。
 
 映画館を出てモール内をブラブラしていたら、いきなりの激しい雷雨。劇中の暴風雨が尾を引くなか、雨宿りで入ったMont-Bell店内の奥で、映画よりも映画なワンシーンに出くわした。天井14mまでそびえ立った室内ロック・クライミングに、7〜8歳の女の子がチャレンジしていたのだ。
 自分的には見上げているだけで膝の笑う高さ。その子の細い足首と、見守る親の不安な表情を交互に見ていたせいもあり、下山の拍手では涙が出そうになりました。
 アニメがあまり得意でない自分には、いい揺り戻しを貰えて大満足の「実写」。
 とてもいい休日だった。


2008.09.05 / John Greaves Peter Blegvad Lisa Herman『Kew. Rhone.』

 きのうのDaniel Paddenで思い出した77年Virginの名作。あの『The Jazz Composer's Orchestra』を仕切ったMichael MantlerCarla Bley夫妻らNYチームがサポートしたアメリカ録音。C.W.pealeの著作「Exhuming the First American Mastodon」の挿絵をベースにコラージュされたというジャケットとその裏の謎度に惹かれ、池袋レコファンでジャケ買いしたのが高校生を卒業してすぐのときだから、かれこれ15年は持っている(聴いているとは書かない)ことになり、3年に1回ぐらいの割合で聴き込むのだけれど、そのたびにいい影響を貰う。A5の「Pipeline」はいつかカヴァーしてみたい。
 
 今日は入稿と編集。最近
ずっとこれだ。


2008.09.04 / Daniel Padden『Pause For The Jet』AMAZON

 落雷の重低音がベッドを揺らし、長い昼寝から目を開けると部屋は真っ暗。いま夕飯食べてもあとは寝るだけだしなぁ……みたいな無気力で聴きたいフリークアウト・ミュージックの傑作。カラカラにドライでダスティな田舎町の原風景に、ミニマルやドローンの定形、浅く入ったワールド・ミュージックからのエッセンスが、死んだクラゲのように漂う。Alex Southという人のバス・クラリネットが非常にいい味で、何度か繰り返し聴いていたら、Kramerの傑作『The Secret of Comedy』とか、John Greaves Peter Blegvad Lisa Hermanの名盤『Kew. Rhone.』なんかを交互に思い出したりもしました。
 録音は悪いが基本は"作曲された歌"なので聴き易く、たとえばJobriathKlaus Nomiのファンがカブるかカブらないかぐらいの微妙な距離感のなか、しかし手を伸ばせど届くまではいかないゴースト感をキープ。そのディスタンスを聴く感じ。ちなみにVolcano The Bearの人のソロです。天才かも。


2008.09.02 / Alejandro Franov『Aixa』AMAZON

 福田総理が辞任! それはそうと、Alejandro Franovの新作が最高! この、印刷見本帳や貸しポジ屋さんの年鑑カタログみたいなジャケでさえ、これはこれでストイック?……と思わせる享楽的音響が詰まっております。生活音や環境音をふんだんに取り入れた、西洋12音階に留まることのない"ゆらぎ"のタペストリーは、ガムランやクロンチョンなどインドネシアの音楽の今日的誤訳、とも評されそう。また、朝5時32分にスペインCordoba Cityに到着した瞬間のフィールド・レコーディングによる前半とガラスをナイフで切りつける音をダイレクトでサンプラーに入れた後半です……とインナーには印刷されているが、何度聴いてもそうは聴こえないM3「Cubiertos」は、Cornelius「Like A Rolling Stone」を想わせたりも。いい香りのする食虫植物を買った気分です。


2008.08.01 / Joby Bernabe『Same』

 楽しかったOATH。雨がザーザーで、それでも遊びたい人だけがワラワラと集まってホーム・パーティしていた感覚。初めて聴いたMaxの本気DJは、ベルギーやイタリアのクール・ディスコと同郷Faze Action関連のトラックなどここ数年のディスコ的アトモスフィア、そこにお手製のエディットやSEなどを絶妙に配し、点の集合ではなく、線の流れを聴かせてゆくプロの業。……と、ほかのDJにも絶賛されていたが、自分を含め、90分をフルで踊る人は少なかったはず。Max自身も、主宰のTetsuyaくんがプレイしていたEstaw and J-Cast「Break It Down」などを聴きながら、「ロンドンであれば、ハウスを聴きたい人はハウスのイベント、ヒップホップを聴きたい人はそのイベントにいく。本当にそれぞれの音楽に飢えた人だけが集まるというのが常識だから、こういうオール・ミックスの場はかなり珍しいね」と神妙な顔していたが、同時に、前述のレコード以外のものを持ってこなかったことに対しての後悔も芽生えたようで、「次はもう少しヘンタイなDJをしてみてもいいかもね」と笑っていた。
 かたや自分のセットは、ヘンタイすぎて踊る人はごく僅か。そうしたくてそうしたのだから反省はないが、フランスのグラム・ロック、ノンビートのギター・インスト、マルティニークのポエット・レゲエ(写真)などで下げに下げ、ラスト20分でようやくイーヴン・キックが入る(芸人言葉で言うところの)ドS選曲。もしMaxと自分のあいのこのようなDJがいたら、そこそこ人気が出るかもね。なんてことを話しながら帰宅した。

 誘ってくださったみなさん、ありがとうございました。今後も精進したいと思います(Maxは明日へと。やはり自分はアサッテ方面へ)



2008.08.30 / Brenda Ray『Walatta』AMAZON

 たくさんの原稿を書いた金曜日。CDのレビューが17本。いま編集している書籍の序文。そして『アイデア』誌次号の特集「デザイナーが書く文字」のための文章。自他ともに認めるところ、文章を書くのはかなり早いほうだから、前のふたつは午前中には終わっていたのだけど、最後のものは800〜2000字というコンパクトなワード数にも関わらず、3時間はかかった。
 書けないから悩んでいるのか、悩んで書くのが向いていないのか、まず、書きたいことを探すのに悩み、そして、書きたいことがないということを説明するために、なぜか3本もの短編(フィクション)を書いてしまった。結果、字数は大幅にオーバー。内容も企画に添えているかどうかわかりませんが、編集Kさんのジャッジで無事に全文掲載となりそうです。書店には、10月10日に並びます。

 9/15から表参道SPIRALにて開催されるイラストレーター長崎訓子の展覧会『merchandise me』のためにデザインしたDMが到着。彼女の事務所の床に造った立体コラージュの写真を、執拗なレベル補正と高細線印刷にて「さもなにかありそうな静けさ」に持っていった。我ながら最高の刷りあがり。今日も引き続き販売用ポスターの制作していますが、あとひとつ彼女の描き下ろしが加われば、さらによくなるはず……という欲があり、ギリギリの進行。

 今日はデザイナー北山さんと家族呑み。『LiGHT STUFf』制作時に連れていってもらい、何度かお世話になった居酒屋さんが、ビルの取り壊しのため五本木に移転してのオープニング・パーティ。いくつかどうしても食べたい名物メニューがあるのだけど、果たして今日はテーブルに並ぶだろうか……という食い意地に溺れています。その前に昼飯がありますが。

 そして明日は渋谷OATHのイベントで、ひさびさにDJ。MAXも駆り出したので楽しくなりそうなのだけど、ほとんど触ったことがないロータリー・ミキサーの扱いが心配(yoga'n'antsの制作で5年通った代々木のスタジオにはBOZAKの初期モデルがあった……が、ターンテーブルは1台しか繋がれていなかった)。
 ここ数年、名機UREIに代表されるロータリー・ミキサーは、滑らかなボリューム・カーヴ/ロング・ミックスを好むハウスDJを中心にトレンドとなっているようですが、自分のレコード・バッグには、ほとんどハウスが入っていないのです。

 写真はemレコードからの再発で知ったレゲエ・アルバム。「Lee PerryKahimi Karieのファン同時KOのキラめく新型ヘヴィー・ラヴァーズ・ロック
」という紹介があながち嘘でない、これから10年は聴ける夏定番。肺炎をこじらせ瀕死のMary Fordに耳元で歌われながらも、先週から探している爪切りの所在が気になってしかたがない……みたいな精神疾患を突いてくる、非常にアシッディな鳴りです。


2008.08.20 / Yukari Fresh『Grrrl, Summer Cape Kid, etc』esc

 Citrusがコンピレーション・アルバムを出すことになりそうで、今日はその打ち合せがある。Trattoriaからの4枚のマキシに、7inchオンリーの曲とか、ライヴのカセットからのカットアップを詰め込んで、40分ぐらいにまとめるつもり。メインに使えそうなアートワークもすでにあり、かなり「らしい」ものができそう。
 で、その下準備=マスターの発掘作業中に、衝撃の新事実が判明。なんとこのバンド、マルチのマスター・テープが存在しないことがわかった。当時のエンジニア上園さん曰く、「確かデビューのときにマルチのテープを1本買ってもらったんだけど、そんなに安いものじゃないから、新しいのを出すたびにそれを消して上から録音してたんだよ。だから、納品時の2MIX DATがマスターなの。ある意味お侍の音楽だよね。あははははは」とのこと。
 まさに録音メディアの変革に嘲弄された、隙間の音楽。Citrusはギリギリでアナログ録音であり、もう少し後ならデジタルに移行していたはずだから、データとしてのマルチが残ったはず。そういえば当時、「リミックスを発注するとかは考えてないんでしょ?」みたいな質問をされて、その意味をきちんと咀嚼することもなく、「もちろん」と答えていた朧げな記憶があります。いやぁ、無知って恐いですね。
 
 写真はYukari Freshのニュー。8曲で15分ぐらいしかなくて、そのなかでも最も短い曲(というかジングル、というかこの作品は全曲がジングルのよう)で江森がドラムを叩いています。音声合成ソフトに自分の名前を呼ばれるのはとてもヘンな気持ち。それ以前に
、ドラマーとしてスタジオに呼ばれるのもヘンな気持ち。
 缶バッヂが無理なくアソートされた紙箱ジャケのアートワークもフレッシュです。




2008.08.19
V.A.『Life Beyond Mars : Bowie Covered』AMAZON
Low Fun「The New Dictator」


 先週末はMaxと下北散策。ひさびさにゆっくり廻ったら、入ってみたい古本屋が何軒か出来ていたのだけど、ひたすらにレコードを買いたい顔色を察して次回に。Jet Setやひよこレコード、そしてDisk Unionなどを巡り、自分も20枚ほど購入。取り置きぶんもすべて清算できてよかった。Flash Disk Ranchのお休みは残念だった。
 写真はその日に買ったもののなかから、新譜と旧譜を1枚づつ。
『Life Beyond Mars : Bowie Covered』はDavid Bowieのカバー集。Matthew DearからAu Revoir SimoneEmperor MachineSusumu Yokotaまで。2000年のLB=Atom Heart「Ashes To Ashes」を超えるトラックはなかったものの、もう何度もリピートで聴いています。
 Low Funは80年代初期の奇妙なシンセ・ポップ。このバンド名しかり、レーベルのDown Town Recordsしかり、極端に検索に弱い単語ばかりで情報も(調べる気持ちも)ないのだけど、B面の「Words We Left Behind」は初期Depeche Modeの違法配信データをさらに何十回か圧縮したような粗悪さが耳につく、でもキャッチーでいい曲。ジャケのイメージそのままの音が鳴ってとてもビックリしました。
 それにしても最近はますますいい新譜が多いですね。あらゆるジャンルに大当たりが多い気がします。もしくは自分の調子がいいのか、聴くもの聴くものが表彰台入り。ほとんどのレコードがメダルを取る。それは言い換えれば、いかに聴いたそばからサッパリ忘れているかの証左でもあるのですが。
 あ、そうそう。Maxの計らいで、あのCharles Websterにyoga'n'antsのCDを渡せたのもよかった。どこからこんな自信が沸いてくるのか自分でも不思議ですが、絶対に好きでしょう。

 そのMaxは、今週末24日のUnit(Aregista Vol.4 Sugar Plant Re-Union Party)、そして31日は渋谷OATH(TOPGUN -extra-)でDJです。
 31日は自分も60分担当します。4台のターンテーブルと2台のCDJとTraktor ScratchとPower BookとTenori-Onを並列に並べながらも2台のターンテーブルしか使わないというスペシャル・セットを披露の予定ですので、みなさまどうぞよろしくお願いします。


2008.08.14 / ジョンとポール『1秒=百万年』AMAZON

 もうだいぶ前の作品ですが、そろそろ新作が出るそうなので改めて。1曲目に、古今東西のレコードから切り取られた1秒の音源が97秒=97サンプルぶん続き、続く97曲は、その1秒を32秒ぶんループさせたトラックで、最後にもういちど1曲目の97秒をリプライズ……という99曲入りCD。いやいやこれでは頓知ですね。
 しかし、ともかく、コレは傑作。アイデアの大勝。美しい和音も性急なリズムも、すべて32秒というリミットのなかで繰り返され、聴く人の鼓膜がそれを「錯聴」。つまりは作品主義であり(他人を巻き込んだ)活動主義の途中報告でもあるというサウンド・アートなわけです。断片の集合でありながら断面の見えない=無音部分が1個所もないというのもナイス。ブレスの時間を与えないことで、いい感じの緊迫感を持続しながら、「サンプル集」になることを強く回避しています。
 ちなみにこのレーベル=Fiction Holeのオーナーは、あなたがいまブラウズしているこのWebを立ち上げてくれた古い友達であったりもして、そこには嬉しい驚きがあったのですが(発売当時、自分は知らずに買いました)、彼は第三のメンバーであるにもかかわらず、"ジョージ"でも"リンゴ"でもなく、"マイケル"と名乗っているとのこと。「George Michaelの"マイケル"ってことにすれば同時に"ジョージ"もクリアできるね」と話したら、アハハハハハ、と笑っていました。いや、ハハハハハハ…、だったかな?

 今日は来月9/15からスタートする旧友・長崎訓子の展覧会『merchandise me』のDMやポスターの制作。彼女といっしょに事務所の床に作ったコラージュを、これまた旧友の梶野彰一くんに撮影してもらったものをレタッチ&レイアウト。DMはフリーだがポスターは販売予定。デザインしすぎると江森の作品に寄ってしまうので、そのあたりの加減や力点が難しい。こんなとき、肩を脱臼できればいいのに。


2008.08.08 / Williams Fairey Brass Band『Acid Brass』

 Maxと近所のスーパー銭湯に浸かりながら、yoga'n'antsの次作のことを話したら、それなら聴いたほうがいいよと貸してくれたCD。ブラスバンドで「Strings Of Life」や「What Time Is Love?」を再編し録音した、奇異な1枚。とくに「Pacific 202」がメチャメチャ最高で検索してみたら、それを収録したプロモの12インチが存在することがわかって大慌て……という情熱や物欲はないにしても、Big BlackA.C. Temple、そしてButthole Surfersのリリースで大変お世話になったBlast Firstからコレが出ている、というのがとてもいいですね。マナーを感じます。
 その昔、Maxと兄弟のBurnabyは、
Joy Divisionのような内省NWに陽気なラテン・パーカッションを加えて微妙な温度にする、というアイデア先行のバンドをやって客を引かせていたというから、自分はお礼に『The String Quartet Tribute to New Order and Joy Division』を貸した。お互い顔は笑っていたが、これらのチョイスには暗喩が、また、その暗喩にはバトルがあるのだ(大ウソ)。

 String Quartet Tributeシリーズは、ほかにもPixies編Black Sabbath編を所有。しかしこれら3枚の再生回数すべてをあわせても、『The Piano Tribute to Pink Floyd』には敵わない。要は、より聴かなくてもいいもの、向き合わなくてもいいものを求めているということか。


2008.08.05 / Spinetta-Jade『Madre en Anos Luz』AMAZON

 最高の漫画に出会った。小田扉の『団地ともお』。これには何度も声をあげ笑ってしまった。子供らの自由や不自由を扱ったものでは、確かに『よつばと!』も面白いが、あの漫画に漫画以上のものを求めるマニアの顔を思うとちょっと引いてしまう人や、『中学生日記』では若干アクが強すぎるという向きには大推薦。読む人の少年期を「俺もこんなことしてたのかも……」と上書きしてしまうほどの観察眼にて、団地という小宇宙の出来事を、清涼感も豊かに切り取っています。
 漫画を買わなくなって随分経ちますが(前述3作品もすべて借りて読んだもの)、これは手元にあってもいいかもしれない。できれば『酒のほそ道』みたいにベスト選集の愛蔵版が出ないかなぁ……。

 写真はSpinetta-Jadeバンドでのラスト・アルバム。側近Mono Fontanaに関しては、まだ現在ほどの才気は発揮していないものの、このあたりが、全人類必聴号泣焼身気化必至の超絶ソロ作『Silver Sorgo』へと続く、熱いのにひんやり路線のスタート・ポイントか。アナログだと84年相応だけど、CD再発だと最近の新譜に見えなくもない不思議なジャケを含め、これもまた傑作。


2008.08.04 / Frank Zappa『Shut Up 'n Play Yer Guitar』AMAZON

 花火が終わってしまった喪失感と猛暑でなんもヤル気せず。いくつかの写真素材をイラストレーターさんに転送しただけで、ひと仕事した気になってしまう。夕飯に、鮪のヅケ丼、パパイヤのサラダ、そうめんにトマトのブツ切りを加えて麺つゆとドレッシングとマヨネーズで和えたなにか、卵豆腐、島らっきょう、もずく酢、和辛子を効かせた納豆などの「冷製」ばかりを端から食べ、大量の水分を摂取して、なんとかデザイン作業に取りかかる。
 この怠惰はクーラーがないせいだ。ロクに調べずに注文したものが業務用寸前の巨大なもので、壁に穴の規格に合わず返品。急いで新しいものを注文したものの、今度は工事業者の都合がつかずに、順番を待たされているという状態。
 あぁ、そもそもそんなことをここに公開したところで、いったい誰が面白いというのか。

 音楽は写真の3枚組を交互に。ただし、扇風機のノイズに少し勝つぐらいの小音量でリピート。たまに聴こえる聴き覚えのあるフレーズが、自分に最低限のテンションをくれる。


2008.08.03 / Andy Partridge『Fuzzy Warbles Vol.7』AMAZON

 今年も1年待った江戸川の花火大会。またしても(ほぼ)最前列で見上げることができ、頭上にも地上にも大きな感動があった。大規模なものは初めてだというMaxには、Nuclear Warだ。End Of The Worldだ。と念を押していたが、やはりあの衝撃は相当なものだったらしく、いざ始まると「Jesus……」という溜め息を連発。隣のお嫁はそんな彼の横顔を観ながら日本人の誇りのようなものを強く強く感じたそう。日向子は恐くて寝たふり。塩の強いおむすびは、アルミホイルのなかで旨味が廻り、史上最強のファースト・フードとなっていた。
 そのまま地元の友達の家でトドメのビールを頂き、風呂にまで入れて貰ったが、途中、半蔵門線の線路にビーサンを落として片足になったりしつつ(乗り換えの際に後ろから誰かに踏まれました)、ようやく25時過ぎには帰宅。最近発見したテレビの番組表機能のお陰で、七色の試験電波に「夜のカラーコード」という、なんだかイヤラシい番組名がついていることを知ったあたりで就寝。最高の1日だった。

 写真は「I'm Unbecome」を収録したAndy Partridgeのホーム・デモ&アウトテイク第7集。シンプルなメロディに、シンプルでないヴォイシング。冷気を含みの多幸感に少しだけ不安の入った、もっとも好きな雰囲気の小品。どっかのマニアがYou Tubeにもあげていました。


2008.08.01 / French Kicks『Swimming』AMAZON

 今日は午後からフジファブリックの取材。作詞と作曲を手がける志村正彦さんは、楕円や多角形にくり抜かれた穴という穴に同じ形のブロックがスポスポとハマるような快感を伴った、とても独特な日本語とカタカナ英語の名手。ライターは10年以上ぶりにお会いする青木優さん。楽しみです。
 その前に友人と昼食。夜は地元の盆踊りに参加して、その後は某出版社と打ち合せ。その後はMax EssaのDJを聴きに。たぶんその頃にはヘットヘトになっているはずですが、予定のない皆さんは恵比寿Bar Jamでお会いしましょう。命の水で乾杯しましょう。

 写真はジャケ買いのFrench Kicks。シングルならともかく、アルバムにここまで気の抜けたアートワークを持ってくるバンドであれば間違いなく俺好みだろうとトライしてみたが、これが想像を超え(微妙で)最高。まさかカリブに現存していたBeggars Banquet支社からの刺客っていうか、雨水の恵みと剥くのが面倒なフルーツばかりを食べて育った南国のSmithsっていうか、なかなか形容の難しいビーチサイドNWの名盤でした。暗くてぽかぽかしてます。


2008.07.28 / 大竹伸朗『ネオンと絵具箱』AMAZON

 あれだけ興奮したViolens。My Spaceで聴きすぎた挙げ句、それほどでもない気がしてきた。う〜ん、これが7インチであれば、ジャケを手に取って、盤を出して、溝を睨んで、針を乗せて。というプロセスが入るぶん、ある意味イーヴンな関係が生まれるのだけどな……。

 つい最近、あるアンケートの筆頭に、「CD、着うた、そのほか楽曲ダウンロード、レコード、ラジオ。普段いちばんよく利用しているメディアはどれですか? いちばん便利だと思うのはどれですか? いちばん好きなのはどれですか?」という設問があって、自分はそれに対し、

「レコードとCDとDVDです。引越しを期にテープとVHSは処分しました。MDとi-PODは触ったこともありません。HDで音楽を作っているくせに、HDには1曲も入れていません。ただし、そこに配信やダウンロードに対する敵意や明確なポリシーがあるかといえば、そんなものはまったくありません。強いて言えば、わずか数分後、もしくは数日後に自分自身が聴くものに対して、購入以外の準備をしたくない、ということでしょうか。それは面倒です」

 と答えた。そのときは、すっかりそれですべてを伝えた気でいたのだけど、いまは「購入以外の準備」という部分に、「必要以上に便利でありたくない」というニュアンスを入れてもよかったと思う。
 音楽は、自分のためだけにあるもの。ひとりでひっそりと楽しむもの。だとすれば、そこまで手軽である必要はまったくないということです。基本、時間のあるときに聴くものだしね。

 今日はZazen Boys向井秀徳さんの取材があった。ライターは小野田雄くん。終始、若干のとどこおりも楽しみつつとどこおりなく充実したインタヴューだったのだけど、取材場所のスタジオが恐ろしく寒く、それが向井さんの冷たいファンクに直結するようで、とても印象的だった。途中、向井さんがクーラーのリモコンに手を伸ばし、少しは救われるかと期待したのだけど、そこからさらに温度が下がった気がした。
 写真は話に出た大竹伸朗の2003~2006年エッセイ集。




※)会期は終了してしまいましたが、ココの「WORKS」から展示作品がブラウズできます。「EXHIBITION VIEW」ではその大きさも計れます。
 とくに好きだったのが、写真の「Continue?-Yes!」と、「Save」と題されたユニットバスの屈み目線のもの。値段もつけられていないのに、飾れる壁があるのかどうかに悩んでしまった……。アニメ(セル画)にもゲーム(ビット画)にもほとんど興味がないクセに、こうも強く惹かれてしまうのはなぜだろうかと不思議なタッチ。

2008.07.26 / 黒川知希個展『Youth』

 黒川知希さんの個展「Youth」@渋谷Nanzuka Undergroundへ(※)。コンテンポラリー。プリコラージュ。コンバイン。レディメイド。呼びかたはどうあれ、間違いなく世界最高レベルのジャパニーズ・アート。最高すぎる!

 その後、わざわざ池袋まで移動して、東武デパート屋上のビアガーデンでチゲ風味のプルコギと、そこに投下する乾麺の間食感にジャックされにいった。
 後ろ隣では(たぶん)大学生のサークル活動。いくつかを繋ぎあわせた大きなテーブルに、男女10名づつぐらいが、西軍・東軍といったかたちで分かれて(しかし向かいあうことなく)座っていて、そこには強固な壁があり、後輩男子のイッキも白々しく響いていたが、中盤、男の子のひとりが女の子サイドのお誕生日席に移動。そこからお父さん(俺ね)も安心のユージュアルな光景へと変化していった。最初に移動したお前は偉い。ほかは腰抜けだ。お父さん(俺ね)はハラハラしちゃったよ。
 そこはジョッキへの注ぎがセルフで楽しいのだけど、みんながみんな、失敗した泡だらけのそれを躊躇なく流してしまうせいで、サーバーの廻りが酷い匂い。それさえなければもっと呑めたと思うのだけど、それでも7〜8杯は呑んだか。クーラーの効いた室内では絶対そうはいかないはずだから、これこそが夏の醍醐味といえる。

 あ、そうそう。御近所Max Essaが恵比寿Bar JamでDJします。8月1日の金曜日です。世界最高峰とも噂されるヴィンテージ・システムで鳴らされる彼の手腕に聴き惚れるもよし。"音のいい立ち飲み"として利用するもよし。楽しみです。


2008.07.25 / Violens「Already Over」

 近年のネオアコ〜ギターポップ系では間違いなくベスト。確かにCaptainなんかもよかったんだけど、ここまで夢中になれるバンドはここ数年いなかった気がする。……という自分も、まだMy Spaceの4曲を聴いただけで、現時点ではどのお店にも売っていないようですが、まもなく店頭に並べば地味ながらも熱い話題になることでしょう。NYプレスはAztec CameraPale Fountainsを引き合いに出して賞賛。確かに誰かの模倣でない歌い込みと(バンドで実現できる範囲での)アレンジの豊かさに共通項を見つけられるものの、そこにUK産にはないヌケ〜MTV育ちの刹那メロ構築のセンスが加わり、なんだかいてもたってもいられないことになっています。
 アーティなジャケもホント最高。早く手元に欲しいなぁ……。

 今日は2本の用事で六本木経由の恵比寿。某ラッパーのアルバムに自分の声ネタを提供する、という珍妙なものと、イラストレーター長崎訓子との打ち合せ。彼女の展覧会のDMや販売用ポスターを自分が担当することになったのだけど、こっちは果たしてどうなることやら。クーラーでなく扇風機を回しているせいもあるのか、喉の調子はかなりいいのだけど。


2008.07.19 / 浅田政志『浅田家』

 銀座ニコンサロンまで浅田政志くんの個展。浅田くんは、アート・ディレクター・タイプの仕事をしないせいもありカメラマンとの仕事はそんなに多くない自分も、ここ近年は本当にお世話になっている人。
 赤々舎からの写真集『浅田家』もいち早く購入し、左開きの本編とともに、家族アンケートを挟んでの右開き・第二部にも感動させてもらった。不穏すぎる名月のもの、すぐに日本のそれとわかる砂浜のものなど、何枚かの風景写真にも、たまらない味わいが溢れていた。

 彼の写真は、並びや版形、プリントやプレゼンによってはドメスティックな「ギャグ」にでも誤認されてしまうものだと思うのだけど、実のところは、「巨匠の作家性」と「写真館のテク」の間にあるもの、または、「スチール」と「スナップ」の境界をもグンニャリと溶かしてしまうほどの浸透力に溢れており、その浸透力のガソリンは、間違いなく「よく知った家族のよく知らない表情を数多く切り取りたい/残したい/楽しみたい」という、愛の力にある。その意味、「血の通った被写体」がいないと成立しない作品とも言えるし、同時に、「自分はなぜ写真を撮るのか/撮りたいのか」という根源を、(たとえば同業者に)これほどに考えさせる写真もないんじゃないかと思う。

 会場を出る際、浅田くんに今後の展開を訊ねたら、今後は浅田家でない家族を撮ってみたいという。もし呼ばれれば、すぐに駆けつけ、打ち合せをし、心の底から頼んで撮影に臨むそう。その証拠、今回の写真集には彼のメール・アドレスに加え、携帯の番号までがプリントされているのだ。




2008.07.16 / Efterklang「Caravan」/ Nick Nicely「DCT Dream」

(2008.07.12から続いて)……というわけで、Maxと新宿〜高円寺〜渋谷のレコード屋を廻ってきた。Maxのリストにはドイツやベルギーのオブスキュア・ディスコ〜エレクトロがズラリ。Ebayアイテムも多いので入手は難しいかと心配していたが、最初の新宿某店でさっそく数枚ゲット。肩の荷が降りました。

 移動中はたくさんの雑談。曰く、「Prefab Sproutがトップ10入り(「When Loves Break Down」)したときは本当に感激した」。「いまはエレクトロに夢中だけど、根っこにはノーザン・ソウルの血が流れている」……などなど。そんななか、最初に買ったレコードの話になり、自分が『Remembrance Days』の話をしたら、「僕は14歳の頃、『The Dream Academy』のプロデューサー(ただしDavid GilmourではなくGeorge Nicholsonのほう)に頼まれてベビーシッターのバイトをしていたよ」と返された。また、「奴はそのときすでに数万枚のレコードを持っていたはずなんだけど、いまは絶対に聴いていないはず。なんとかその行方を追ってみたいんだけど……なんてことはいまのいままで忘れてたよ……」とも。

 写真は自分の戦利品。新譜と旧譜でいちばんよかったものを1枚づつ。EfterklangはSigur Rosにも参加の女性四重奏Amiinaが参加かつLeaf産のエレクトロニカ……というだけでパスする人も多そうだけど、この曲はタイトルからの期待を裏切らないカンタベリアリー(?)なチェンバー・ポップで激最高。出だし10秒きりの試聴で、そのメロディが帰宅後のビールまで頭のなかを廻りました。時代感のないPVも最高すぎる。アルバムにも期待。
 Nick Nicelyは(いま調べたら)アルバム『Psychotropia』が各所で絶賛されていたUK SSWの自主盤。レーベル番号が1001なので、これがデビュー盤なのかもしれない。未聴のアルバムへの評価は「サイケ」ということになっていて、アートワークもいかにもソレ風なのだけど、ここに収録の2曲はチープなシンセがひんやりと美しい、フラジャイルなエレポップであった。


2008.07.14 / David Bowie『Stage』AMAZON

 ライターに『Life At Slits』著者の浜田くんを迎えて、STANというロック・バンドのインタヴュー。90分のところを3時間話した。うねうねと迷走しながらも、とても芯の通った話。アーティストの顔にも、話し切った、という表情が浮かぶ。原稿にも期待が募る。すべての取材に、こんな緊張感と達成感が伴えばいいのに。
 その後は気持ちよくサシ呑み。今度は迷宮のような無駄話。

 写真は帰って聴いたDavid Bowie74年のライヴ。自分がライヴもライヴ・アルバムを好きでないこともあり、いままでは「Station To Station」や「Warszawa」や「Star」の別ヴァージョンが聴ける作品……ぐらいの認識しかなかったのだけど、レコードの整理中に何気なく眺めていたボウイの上着が米Rothco社のMA-1であることを発見し、そのセンス込みで再評価となったもの。このステージ、このライティング、このレパートリーに、このジャケット。たぶん裏地はオレンジ。究極のスタイリングだと思う。


2008.07.13 / Galliano - Capon『Blues Sur Seine』AMAZON

 友達にイベント・フライヤーのデザインを頼まれていたので、さっそくMAXをブッキング。裏面の文字ボックスをカカカカカッとズラして、サササササッとプロフィールを書いて、トゥルルルルッと電話し写真を用意してもらい、すぐ入稿。いまどき文化祭でもこうはいかないのではないか、という進行。結果、8/24のUNITは日英バレリアック対決の体となり、かなり華やかなイベントとなりそう。楽しみです。

 写真は古い友達に教えてもらった「Waltz For Debby」収録盤。もはや大抵のヴァージョンには驚かなくなっている自分だけれど、これは絶品。ウッドベース主体の導入部から、アコーディオンに(主旋律の)バトンを手渡す瞬間など、何度聴いてもうっとりとしてしまう。Daniel Lanoisのスティール・ギターなんかを聴いてるときの酩酊感にも近いかな。


2008.07.12 / Max Essa

 最近、マンションの階下のポーチでいつも遊んでるハーフの女の子がいて、さっそくうちの日向子が仲良くなった。子供は壁がなくていいなぁ……と見習い、さっき、向こうの旦那さんも呼び出し、今晩、簡単な親睦会を開くことに。向こうの奥さまに旦那さんの素性を訊ねたら、なんとその人、Max Essaだった。

 Max Essaは御存知Paper Rec.〜Bear FunkのDJ/ミュージシャン。4月に日本にきて、うちの隣りのマンションに引越してきていた。すぐにお互いの概要を報告して、意気投合。Maxの部屋でさまざまなオブスキュア・ディスコを聴かせてもらう。隣りの部屋からは、新しい友達ができ嬉しい子供たちの笑い声。その晩は自分とMaxで(競うように)ビールを空にした。

 思えば、Citrus時代は、その前にやっていたバンドの知り合いがMAエンジニアをしていて、その人のお陰で、練習を一度もしないままにレコーディングに臨めた。
 yoga'n'antsでは、エンジニア/共同プロデュースを頼んだ渡辺くんが偶然にも同じ駅に住んでいたことで、時間はかかったものの、なんとかアルバムが作れた。
 人との縁に関しては、本当に運のいい自分。前述ふたりがもういない今(もちろん存命だけど)、またこれが新しい出会いなのかと胸高鳴っています。
 ちかじか新宿のレコ屋もナビらなくてはいけない。そのかわり、英語の専属コーチにもなってもらおう。

 DJのブッキングは彼のMy Spaceまで。


2008.07.08
Fricara Pacchu「Stories of the Old」AMAZON
Peter Beste『True Norwegian Black Metal』AMAZON


 初期Pavement現Black Diceラインの極彩色ペイント〜コラージュを中心に、かなり気合いの入った作品の続く36Pアートブックつきの7インチ。そのクオリティはどうあれ、「やり散らかしてるなぁ……」と感じられることが自分の創作意欲に直結するので、この手のものは否応なく買うのだけど、それらのなかでもすごく充実した内容かと思う。たとえば、ジョギングするジャージの男女の中央に針葉樹林状の方眼とスカイ・ダイヴァーたちが切り貼られ、橙に光る自動車のテールランプがアンカーとして置かれているもの……などなど、細かく没頭する部分と大雑把にほっとくスペースのバランスが◎。ギークななかにもある種の品が感じられ、本棚や資料の束の間にひっそりと挟まっていて欲しい物体Xとなっています(※)。

 また、創作意欲、といえば『True Norwegian Black Metal』も通して5回は眺めた。白と黒、血や血糊の赤、針や鋲の光沢で綴られた、これもまた、ひとつの色彩見本帳。たとえばオブジェクトの色彩〜カラーリングに迷ったときは、中国少数民族の民族服や南米の昆虫にヒントを貰う人も多いと思うのだけど(本当?)、本書も充分にその問いに答えてくれるというか。

 解説や年鑑など、資料的なページもありますが、それで手元の『De Mysteriis Dom Sathanas』や『Det Som Engang Var』の音が変わるわけではないので、自分的にそのへんはパス。


※)さらには音もなかなかの出来。明らかにNeu!の模倣ながら、そこにカジュアルな薬物摂取を経た精神性や正当化または自己防衛を加えることなく、たとえばTrattoria時代の想い出波止場を思い出させるようなザックリ感を獲得したB2など、ほどよきダーティにシビれる。





2008.07.06 / WAX「No. 10001」

 色気など微塵もなく、色すらもない地下テクノの傑作。生産地や生産者の個性がまったく見えず、たとえばダブ・ステップは光沢のある灰色……ディープ・ハウスは黒に近い紫……と、音楽にはなにかしらの色彩感がついて廻るものだと思うのだけど、これはただ「できたので出しただけ」みたいな無味乾燥が徹底されており、しかしそこにすらカラーとして滲むものがなく、ベースラインを含め、いっさいメロディ要素の感じられない骨格だけのフレーズに、MPCの内臓フィルターを使ったと思しきハットの切れ味が鋭くなったり鈍くなったりしながら進行し、抑揚なく終わる。
 デザインは、ラベルに文字のハンコ。白ジャケットすらもつけられていない。同じくハンコ・ジャケであるSleeparchive作品の工業製品感〜生涯テスト・プレス観にもシビれたが、こいつの王女様気取り=聴きたい奴だけ聴けばいいじゃない。は、以降に続くであろうナンバーズに対してのコレクト欲すら刺激しない。ひさびさになんでもないものにつきあわされた気持ち。いわば、度を超えた無表情。



yoga'n'ants INFORMATION



yoga'n'ants OFFICIAL T-SHIRTS


YNA in Bush(左)¥3900
YNA in Flambeaus(左)¥3900


 冬ですが、好評につき追加清算いたしました。Shopのページからどうぞ。
 また、左の「YNA in Bush」はセレクト・ショップAdam et ropeさんのみのヴァージョンも発売されます。こちらもどうぞよろしくお願いします。


WEB直販(好評につき送料サービスとなりました)

 
こちらです。

 取り扱い店舗も募集中です。ディストリビューターのBOUNDEEさんより全国レコード店に流通がありますが、ウチの店でも売ってやろうという個人商店のかたはこちらより直接御連絡ください。
 また、「友達を集めたので3枚のみ卸し価格で」などは御遠慮頂きたいのですが、たとえば放送部の貴方が校内放送でヘヴィプレイし、その結果、クラスの過半数が買う、みたいな特異な状況の場合はすぐに御連絡ください。面白いので。

全曲解説
 
特設ページからどうぞ。説明しなくても伝わる音楽を作ったつもりですが、長いです。


雑誌掲載情報
 『装苑』『ダ・ヴィンチ』『bounce』『Invitation
WEEKLYぴあ』『PHONO』『FUDGE』『MUSICA』『VICE』『m/f』『SOUND&RECORDING MAGAZINE』『TVブロス』『EYESCREAM』『MARQUEE』『REMIX』『barfout!』『RIDDIM』『SWEET』『SPRING』『CDジャーナル』『ギター・マガジン』『カーセンサー関西版』ほかに掲載されています。されます。


ラジオ出演/webマガジンなどの掲載情報

 http://neojaponisme.comに江森のインタヴューが掲載されています。

MdN Interactive』内のコンテンツ「これがデザイナーへの道」の取材を受けました。デザイナー江森の話がメインですが、yoga'n'antsのことにも触れて頂きました。
  
bounce.com』のインタビューがアップされています。

Unique the Radio "Orient Express"
  文化放送デジタルラジオにて放送された、サラーム海上さんによるワールド・ミュージックのプログラムに江森が出演。yoga'n'antsの栄養となった、また、なんらかの共通項を感じる新旧ワールドを10曲ほど選曲し、しゃべっています。




管理者プロフィール
江森丈晃(Takeaki Emori)
グラフィック・デザイナー/ミュージシャン/ライター/編集者(順不同・日替わり)

 ソニーマガジンズ〜宝島社での丁稚時代を経て、98年、デザイン事務所 "TONE TWILIGHT(トーン・トワイライト)"をスタート。
 CDジャケット、アパレル、エディトリアル、編集業を含む装丁少々のwebなどを手がけ現在に至る。
 また、90年代初頭から中盤まで活動していた"CITRUS"というバンドのメンバーでもあったため、リミックスや楽曲提供など、ミュージシャンとしても活動。事務所と同名のインディペンデント・レーベルの代表でもある1972年11月14日生まれ。

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